King of White.

トリュフの王様、白トリュフ Tuber magnatum の魅力に迫る


DISCOVERY


美食の秋をリードする魅惑の香り、トリュフの頂点に君臨する王家のトリュフとは

ジャガイモのような素朴なビジュアルからは想像もつかないほどの形容しがたい唯一無二の芳香を放ち、カリスマ的な存在感で世界中の美食家を魅了し狂わせる最高級トリュフ、白トリュフ(Tuber magnatum)を徹底深掘りします。

白トリュフとは

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すべては自然まかせ。栽培できない稀少トリュフ

白トリュフの魅力の一つである「稀少性」

栽培可能となり流通量が増えた黒トリュフとは異なり、現時点で白トリュフは自然の中で自生しているもののみ。イタリア半島を縦貫するアペニン山脈の中部〜北部、クロアチア、スロベニアを跨ぐイストリア半島、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、セルヴィアなどごく限られた地域のみに自生しています。

ワイン同様、トリュフの品質も産地のテロワールが反映されるといわれ、イタリア・ピエモンテ州(アルバ近郊)で採れる白トリュフはアルバの白トリュフと呼ばれ最も高値で取引されます。日本ではあまり知られていませんが、マルケ州のアックアラーニャも良質な白トリュフが採れる名産地です。

自然界で自生する白トリュフは、その採集量がとても不安定。ベテランのトリュフハンターでさえシーズンが始まってみないと白トリュフの状態や数は予測できないといいます。ただし「雨」はトリュフの成長に欠かせない重要な要素です。一般的に夏に雨が多く降ると、秋にトリュフがよく育つといわれていますが、シーズン中の天候によっては急に不作になることも。言うまでもなく、不作の週は市場価格が大きく跳ね上がります。

スピード命、香りはどんどん消え失せる

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白トリュフは薄く繊細な外皮に覆われており、成熟したトリュフは土の中から「私を食べて」と言わんばかりの強烈な香りを放ちます。その香りはニンニクやチーズを連想させますが濃厚ながら鼻から脳に抜けるような複雑かつセンシュアルな香りです。ただ無情なことにその香りは採集後、時間の経過とともに失われていきます。故に、現地ハンターらによって採集された白トリュフはすぐさまバイヤーにより買い取られ国内外のトリュフ業者へと流通させる必要があるのです。白トリュフの大部分は水分でできており、香りが弱くなったトリュフは軽くなります。逆に大きさの割に重さを感じる粒は香りが強い新鮮なトリュフの証です。香りを保存することができない儚さも、白トリュフの魅力なのかもしれません。

白トリュフ

トリュフハンターの家をまわって採れたてを買い付けにいく

シーズン初めは虫食いリスク大

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白トリュフの香りは人間だけでなく、あらゆる動物を惹きつけます。白トリュフの薄い外皮にはよく小さな虫の通った穴が見受けられます。X線でトリュフの中身を確認するわけにはいきませんが、虫がトリュフを食べつくしている部分は空洞ができるため外から触ると柔らかいのでわかることがあります。白トリュフは早いと8月下旬ごろからみつかりますが、気温が高いうちは虫食いのリスクが高く、トリュフの質も安定しません。

イタリアのトリュフ産地では、各地域で白トリュフの採集を開始できる日がさだめられています。これは生態系を守るためだけでなく、イタリア産白トリュフの品質を保持するためでもあります。

虫食いで穴が無数にあいたトリュフ

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生のまま、薄く削って香りを楽しむ

まず外皮についた土をブラシや刷毛で丁寧に落とします。穴やくぼみに入った土はつまようじなどを使って。

つぎにトリュフの表面を少し濡らしたキッチンペーパーや布巾でみがき汚れを取ります。白トリュフは水で洗わず、傷みや汚れが取れない部分はナイフやカッターで薄く削り取りましょう。

より薄く削ることができるトリュフスライサーを使って、食べる直前にお皿の上に直接削っていただきます。温かいパスタや、リゾット、ステーキ、目玉焼きによく合います。

バターや卵などのマイルドな食材は白トリュフの美味しさをより引き立ててくれます。

巨大トリュフを夢見て

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白トリュフの大きさは様々です。10g程度の小さな粒もあれば100gを超える大粒に成長することもあります。大きい粒になればなるほど香りを強く感じやすくなり、市場価値は高まります。通常グラム単価で金額が決まるトリュフですが大きい粒になると粒ごとに値がつけられグラム単価は高くなります。なかでも300gを超える巨大白トリュフはとても稀で、幸運にも見つけることができたトリュフハンターは多大なる報酬を得ることになります。

2023年には1キロを超える超巨大白トリュフが発見され、アルバで開かれたオークションで競売にかけられ13万ユーロ(約2080万円)で競り落とされました。

白トリュフが採れる可能性が高まる10月〜11月は最もトリュフ狩りが過熱する時期で、会社を休んでトリュフ探しを行うハンターもいます。(副業としてトリュフ狩りを行う若いハンターも多いのです)

大きな白トリュフ

巨大トリュフの買い手は世界中の顧客リストから探します。特に香港、NY、ドバイの顧客に人気。

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受け継がれる伝統

今もわたしたちが白トリュフを楽しむことができるのは、

大切な自然からの恵みを絶やさぬよう、何世紀にも渡り受け継がれてきた伝統的な知識と実践があるからこそ。訓練されたトリュフ犬と自然生態系に関する知見があるトリュフハンターのゆるぎないパートナーシップにより白トリュフをみつけることができます。

2021年「イタリアのトリュフ狩り」はユネスコ無形文化遺産として登録されました。

白トリュフを次の世代に引き継ぐために —

イタリアのトリュフ狩りには細かい規定が定められています。トリュフの菌糸を傷つけないように採掘に使用を許された小さいクワ、Vanghetto(ヴァンゲット)は尖りすぎていないこと、土の中に入れていい深さも明確に定められています。またトリュフを土の中から取り出した後は必ず土をそっと戻さなければいけません。トリュフの菌糸を傷つけるとトリュフができなくなるどころか共生している樹木をも失うことになり生態系を壊すことになるのです。

ヴァンゲット

トリュフハンターが実際に使ったヴァンゲット。土壌の硬さにより使い分けます。TRUFFLE GALLERYにて展示しています。

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